「子供が産まれるので育児休職(育休)を取得しようかと考えているんですが・・・」
こういったことを周りに話すと、「なんで男性なのに育休取るの?」とか、「理解のある職場で良いね。」とか多少の小言を受けることが多いです。
みんなクチでは頑張ってというけれど、お酒のある席で話をしていると、育休のせいで自分の仕事を他人を押し付ける形になって迷惑をかけることになるから取れないと言ったりもします。
これは暗に「お前の育休のせいで迷惑がかかるやつがいるんだ」と言われてるような気がしますよね。
そもそも男性が育児休職を取るということで、どこにおかしな点があるんでしょうか?
今回はそんなまだまだ育休が取りやすいとは言えない男性の育休の上手な取り方、計画方法、仕事の仕方から、実際の男性の育休取得のメリット・デメリットについて、今まで実際に2度の育休を取得してきた経験から解説していきます。
日本の育休取得率
厚労省のデータによると、女性の育休取得率が82%に比べて、男性の育休取得率はなんと6.2%。
ワタシも今の会社の中では珍しい男性の育休取得者になるので、ことあるごとに色んな社内のイベントに呼ばれたりします。そのおかげでその会社の中でも希少な他の男性育休取得者に巡り合うこともあるんですが、そういった方の場合の多くが、様々な理由があってとっている方でした。
例えば、女性の方が収入が多かったもしくは仕事を続けたいという理由から女性ではなく男性が育児を専業するような分担にしたケースや、また別のケースでは女性の方に健康上の理由があって、男性が育児に専念する必要が出たなどなど。。。
正直こういった話をされた後に、ワタシの育休取得理由を話すのはとても気が引けます。
ワタシの育休取得理由は、「公的な育休制度があって、国も会社も取得に対して反対せずに、大きな収入減も発生せずに、社会人の身分で長期間休暇を取ることが出来たから」です。
個人的には育休は税金と同じようなものだと思っていて、請求しなければ絶対に使用できないが、制度をうまく活用すれば必ずお得になるものです。
社会人になってから1ヶ月以上の連続した休暇を取得でき、その期間中ほとんどの収入減が発生しないのであれば、なぜ取得を躊躇うのかが理解できなかったのです。
男性の育休取得を躊躇う理由
よく男性の育休を取得しない理由を聞くと以下のようなことを理由として挙げられます。
こういった声は過去の公的な調査からも同様のことを伺え、男性にとって育休取得にハードルがあると感じている人が多いようです。
男性の育休取得のメリット
ここでは実際に取得することに得られるメリットについて解説していきます。
休業補償+社会保険料免除で収入は補償される
そもそも収入が下がるに関しては完全なる誤解です。
男性でも育休取得期間中は、国から標準報酬額の67%の収入が保証されており、この金額が財源は実は僕たちが毎月国に払っている雇用保険料から捻出されています。雇用保険というと、なんとなく失業したときや、転職したときのつなぎの収入のようにも聞こえるかもしれませんが、育休期間中の休業補償についてもこのお金が使用されています。
さらに過去以下のページでも説明していますが、育休期間中は社会保険料が免除されます。社会保険料は実は皆さん毎月かなりの金額を支払っています。月に数万〜の社会保険料が免除され、そして67%の休業補償が加わると、正直育休期間中の支払いは、ほぼ変わらないということになります。
https://simple-was-best.com/father-childcare-planning/
また一般的に保険というものは請求しない限り、単なる損となる支出です。雇用保険についても同様で、もしあなたが社会人1年目から定年まで一つの会社で勤め上げたとすると、あなたの支払った雇用保険料は全て単なる損になります。保険という仕組み上そういうものなのです。
なので、そういったものを回収する手段としての育休取得というものがあり得るわけです。
育休取得後の男性はその後の家事・育児参加率が上がる
人口減が社会問題化している少子化ですが、ある統計では「1人目が生まれた時に夫が家事・育児に参画しないと二人目以降がうまれていない」ということがわかっているそうです。
さらには男性の育児の参加率は低さが出産のハードルになっているなんて話はよく聞く話です。男性の育児参加が低いがために、結果的に女性の育児のワンオペとなり、それが産後うつという病気にもつながってしまいます。
カナダのケベック州は、男性の育休制度に力を入れている州なんですが、「親休業給付」と「父親休業給付」というものを連邦政府とは別に州独自に予算を確保して進めています。そのおかげもあって、カナダの中でも男性の育休取得率がなんと82%(2008年)になったそうです。
その中でのレポートで興味深いのは「育休取得前と比べて育休取得後の父親の家事・育児の参加時間が増えた」ということ。具体的な数字としては子育て時間が20分、家事時間が15分増加したらしいのですが、これが何をいいたいというと、育休取得中の子育て時間が増えるのは当たり前なのですが、育休取得後の家事育児の時間についても同様に増加しているということです。
つまり育休取得をすることで、男性の家庭に向ける時間が増え、結果的に家族の時間が増えることにつながっています。
つまり男性の育休取得というのは本人だけの問題ではなく、家族の問題も解決し、最終的には日本の社会問題にも繋がっていく話にもなるんです。
まとまった時間で自分磨きに当てることもできる
さらには育児という名目にはなっていますが、要はまとまった休暇というにも捉えられます。
あなたは社会人になってから、1ヶ月以上連続した休暇を取得したことはありますか?
よく大学生の夏休みなどをみて、それが最後になるからしっかり遊んでおけと、死んだ目で言っていた先輩もいたかも知れません。おそらく男性社会人が連続1ヶ月以上仕事を休めるのは、育休以外では病気になった時か、会社を辞めた時だけでしょう。
法律が許し、会社が許し、家族が歓迎するのであれば、育休を取得し、このまとまった時間を使って、育児の合間に資格の勉強や、やりたかったことに当てるのも良いでしょう。
妻との二人の育休取得だからこそ、ある程度手が空くんです。
これが一人だけ育休取得をしていた場合には、毎日「泣く→ミルク→家事→泣く→ミルク→家事→・・・・」が続いてしまって、自分の時間なんて作れないんですよ。2人で子供をみていれば、自分だけの夫の時間も、自分だけの妻の時間も確保しお互いがハッピーになることができますよ。
男性の育休取得のデメリット
ここからは実際に取得したからこそわかるデメリットも教えます。
賞与(ボーナス)は下がってしまう
育休中は育児給付金があるという話はしましたね。標準報酬月額の67%まで国が補償してくれるんですが、あれで補償してくれるのはあくまでも毎月のお給料だけです。
賞与は会社が査定して、半年の成果に対して報酬を支払うものですから、育休中は会社としては無給欠勤(評価に影響しない)扱いです。
つまり6ヶ月中2ヶ月育休した場合には、単純に3分の1分は減額されてしまうわけになります。
この減額分をどう見るか、正直人それぞれですが、このお金を払っても家族の時間を確保したい、自分の時間を作りたいと思うと、正直安いと考えれるんじゃないでしょうか?
社内評価は下がらないかも知れないが、出世は遅れるかも
育休は基本的に上司はマイナスの評価をしていけません。
今の時代にそんなことをしたら大変ですよね。ある調査で、男性の育休に対して上司が不利益な扱いをしたいうことをSNSで投稿したら、内容が拡散され、最終的にその男性の会社の株価が下がるという影響まで出たそうです。
なので、育休取得をしたことで、会社は取得者に対しての不利益な評価をしてはならないことになっているんですが、実質的に評価がない状態になります。
そのために育休取得の間に、会社の他の人が挙げた功績に対しては、会社は+の評価をします。育休を取得し成果がない”あなた”と育休取得せずに家族を犠牲にして頑張って働いた”育児をしない男性”を比べてみれば、それは”育児をしない男性”の人の方が評価されてしまう現実があります。
但し、今後はこういったワークバランスが取れた社員の方をより会社として長期的視点で評価するという流れが出てくるかも知れませんね。
これからどんどん高齢化社会になっていき、働く時間はどんどん増えていきます。大学卒業から65歳の43年間を考えれば、その中で育休取得をする数ヶ月がなんだって言うんですか。数ヶ月をケチるぐらいであなたの出世がダメになるぐらいなら、そんな会社あなたから辞めたほうが良いですよ。
男性の育休取得の取り方/マインドの持ち方
ここからは実際に取得する方法というよりもマインドを中心に話していきます。
実際の取得方法は会社の制度にもよって違うので、人事や総務などに問い合わせてください。
育休を取ることを決めたら周りに常日頃から取得することをアピールしておこう
「休みキャラ」ってあなたの職場にも居ませんか?
「あいつはいつも夏休みは長めに取って良いよなー。」とか、「実家が遠いから正月は2週間休みを取ります」とかそういう長期休暇を取りがちな人って職場にも一人はいると思うんですよね。
あれって実は結構良い方法で、あの人は夏休みになると長い休みを取るということがみんなの当たり前になっている状態なんですよ。事前に取ることがわかっていれば、上司もそれを前提にリソースシフトを作りやすいし、「あの人は取る人だから」というレッテルが貼られるわけです。
レッテルと聞くと何か悪い印象に取られがちですが、全体的にみれば、休むことがわかっているので、それを前提にみんなが動けるので、特に問題になるようなレッテルではないんです。
育休も一緒で、是非あなたも結婚したら、もしくは結婚する前から、「僕は子供ができたら育休を取得します」と宣言しておきましょう。今の時代、その時点でダメだという上司は居ません。そんな上司が居たら無能です。
これをちょっとした節目で同僚、上司にも言い続けていれば、実際に子供が生まれたときにむしろ「育休は取得しないの?」とか周りから言われるぐらいになりますよ。
チームで仕事をしよう
育休のハードルの声でよく聞くのが「休暇期間で他人に迷惑をかける」ということですが、例えばこんなケースはどうでしょうか?
55歳になったら役職定年になり早期退職をした人、60歳で定年で満期退職をした人、30歳で仕事を変えたくて転職をした人、不祥事を出して懲戒解雇になった人、急な病気にかかり長期間離脱せざる得ない人、会社の方針で人員配置変更などのでメンバーが急にいなくなったり、予算の関係で人が急に減ったりと、会社生活をする中で育休以外に急に人員の変更が出ることは普通にあり得ます。
そういったとき、どうしていたかというと、特に何も変わりません。所詮1人のスーパーマンなど居ないのです。1人がいなくなったとしても大局的にみれば大して変わらずになんとかなるものです。そもそもこういったことをお互い様だと思えないと社会人としてやっていけないと思います。
もちろん居なくなった直後は多少いつも違うやり方に困るかも知れませんが、いつも違うことを人生のスパイスだと思って過ごしていけば良いと思いますよ。
もちろん急にいなくなることに慣れろというわけではありません。
ワタシが推奨する仕事のやり方はスーパーマンに依存させないチームを作ることです。常にチームで仕事するようにしていれば、例え一人が数ヶ月居なくなったとしても何も問題なくチームとして機能し続けることが出来るはずです。
育休は女性だけのものではない
次に「職場で取れる雰囲気にない」という声に応えてみましょう。
先ずはあなたの職場には女性はいませんか?その女性は育休を取得していませんか?おそらく産休も取得して、育休も取得して、丸々1年半近く休職していたりするでしょう。
さて、あなたの職場ではそんな子供を産む女性に対して、「ずるい」とか、「そんなの必要ない」とか思ったりするでしょうか?もしその答えがYESなのであれば、さっさと転職した方が良いです。
そもそも国全体で大局的に考えれば、人口は減る一方です。人口が減るとどうなると言えば、高齢者が増えて、全体的な税収が減る一方で、高齢者の医療費がどんどん膨れ上がり、負のスパイラルに陥ります。
では、これを男性に置き換えてみましょう。
男性が育休取得をすると言ったら、どうなるんでしょうか?僕には正直何が違うのかわかりません。女性であれば、管理職じゃないから大丈夫なんですか?女性には大切な仕事を任せていないから大丈夫なんですか?そもそも前述の通り、日本は全体的に働き手が不足している中で、重要な働き手である女性を管理職に据えないといった前時代的な職場は早く消し去るべきです。女性はもっと働くべきなのです。
その前提で立って考えみれば、男性というよりも、子供が産まれて育休を取ることは当然のライフスタイルだと考えられるはずです。
まとめ:育休は自分を変えるチャンス
最後になりましたが、最終的に1番のハードルは「そもそも育児よりも仕事が好き」ということだったりします。
おそらく皆さん色々と理由を並べてきますが、結局一番最後はここなんだと思います。子供を育てるってすごい大変です。言うことを聞かないし、やりたいことしかやらないし、自分のことしか考えないしと、すごい労働です。
しかし育休を取った男性の話で、「仕事を始めてからこれだけ濃密に家族だけで過ごした時間はなかった。産まれた子供の日々の成長をみれたと言うことはかけがえないのものだった。」という声も聞こえます。事実育休を取得した男性と、そうでない男性を比べるとその後の男性の育児参加率に大きな影響を与えることがわかっている(カナダのケベック州の調査)そうです。
男性にとってもこの育休というものが新しいターニングポイントになり得るのです。一度会社から離れて自分と家族を見つめ直して、新たな人生の紡ぐことができるというのは本当に貴重です。
育休を取ったからということではないですが、今後このコロナの時代において、社会人には今までになかった新しい視点で仕事をすることが求められます。育休を取って過ごすことが男性に取って新しい何かを与えてくれることは確実です。
育休というのはその長い人生に取って一瞬です。たった会社生活の中で数ヶ月の休みに何を恐れているんですか?数ヶ月休むことであなたの人生がどう狂うと恐れているのか?
昇格が遅れる?同期に追い越される?人生は早い者勝ちではなく、最後まで走りきった人が勝ちなのです。コロナ禍の世界で社会は一層の変化が求められています。
ただ漫然と仕事をし続けるのではなく、一度立ち止まって家族を見つめ直し、自分を見つめ直す時間に育休を使ってみてはどうでしょうか?